前橋市、講演会「地域公共交通の再生とまちづくり ~LRTの可能性~」2月10日(火)に開催

前橋市は、LRTを含む新たな公共交通を考えるため、宇都宮浄人(きよひと)関西大学教授による講演会「地域公共交通の再生とまちづくり」を2月10日(火)に開催しました。

詳しくはこちら→ 産経新聞 2015年2月11日報道

前橋市は、現在は鉄軌道が直結していないJR両毛(りょうもう)線の前橋駅と上毛電鉄の中央前橋駅の間(約900m)について、2015年度に両駅を直結する新たな公共交通整備についての調査を実施します。
2015年1月14日の市長定例記者会見で、前橋氏の山本龍 市長は「これからの交通システムを考える中で、LRTは魅力的だ。新しい交通の確立に向けて調査を始めたい」と発言しています(朝日新聞群馬版 2015年1月23日報道)。


2015年2月10日(火)に開催された講演会「地域公共交通の再生とまちづくり ~LRTの可能性~」(会場:前橋プラザ元気21)で行われた講演会で、関西大学経済学部の宇都宮浄人教授は、LRT(軽量軌道交通)導入や公共交通の活性化によって人の動きを変わったことで、中心市街地の活性化に成功している国内外の事例を紹介しました。

イギリス・マンチェスターでは、分散していた鉄道ターミナル間にLRTの軌道を新設して結節し、郊外の鉄道路線からそのまま中心市街地の新設軌道に乗り入れる「トラムトレイン」を頻繁に運行するようにしたことで、中心市街地の活性化と、並行道路の交通量減少を実現。


富山市では、30~60分ごとの運行だったJR富山港線をLRT化した「富山ライトレール」が、列車の運行頻度を10~15分ごとに引き上げ、最終列車の運行時刻を繰り下げたり、新駅の設置、LRTの運行と連動する「フィーダーバス」を運行するなどした結果、JR時代より利用者数が平日は約2.1倍、休日は約3.5倍に増加。

便利で利用しやすい公共交通が利用できるようになったことで、従来は外出を控えていた高齢者が気軽に外出できるようになっていることも紹介しました。


一方、LRTを既存の道路空間に設置する場合、車線の減少を伴うことがあるため渋滞するのでは、という懸念については、利便性が高いサービスを提供すれば、自動車から電車へと乗り換える人が増えて道路交通量が減少するので、円滑な道路交通が実現可能と解説。
また、整備コストがかかる点については、そもそも公共交通は社会資本であること、整備によって得られる社会的便益が社会的費用を上回ることこそが重要なので、事業単体での赤字・黒字の議論に陥らず、広い視野での検討と議論が重要であると説明しました。


宇都宮教授は、LRT導入や地方鉄道再生などの事例で検討されるようになった上下分離方式の考え方は、日本では群馬県がパイオニアであったと指摘(みなし上下分離方式)。
前橋へのLRT導入については、日本政府がLRT導入に積極的であることを紹介しながら、まず目指すべき地域社会の姿と交通の位置づけを明確化して、「前橋をこんな街にしたい」というグランドデザインを描くことが大切であること、最初から壮大な計画を実行しようとするのではなく、まずできるところから着手して成功事例を「やって見せる」ことが重要だと話しました。