宇都宮市、従来想定を大幅に上回る調査結果を反映した新たな事業費を公表

宇都宮市は、先日実施したLRT沿線従業員アンケートの結果を反映して、以前の想定より大幅に輸送力を高めて速達性を向上させる、新たな事業費の試算を明らかにしました。
詳しくはこちら→ 読売新聞 2014年8月22日報道


LRT沿線企業従業員アンケートは、LRT導入ルート沿線の清原工業団地、芳賀工業団地、芳賀・高根沢工業団地、大型商業施設「ベルモール」に勤務する約3万3千人の従業員が対象で、LRTが開業するとどの程度の利用が見込めるかを事前に調査するために2014年4月上旬から順次実施していました。

その結果、LRTを「利用する」が13.5%、「快速があれば利用する」が9.8%で、合計23.3%でした。
また、現在は通勤手段として自動車を利用している人がLRTでの通勤に切り替える「転換率」は、19.1%に達しました。
これは従来宇都宮市がLRTの採算ラインとして想定していた転換率3.6%という数値(2001~2002年に実施した調査に基づいた数値)を大幅に上回っていて、LRT導入と公共交通ネットワークの抜本的な質的改善に対する市民の期待が極めて大きいことを示しています。

宇都宮市は、LRT沿線企業従業員アンケートの結果などを反映して、従来の計画よりも大幅に輸送力を強化して、よりスムーズな輸送サービスを提供できるよう、最新の状況に基づいた検討を進めてきました。

従来の想定では、JR宇都宮駅東口から宇都宮テクノポリスセンター地区まで約12kmの事業費は約260億円と算出していましたが、アンケート結果に基づく最新の需要予測を反映した新たな事業費は約406億円、快速運行を実現すると約412億円と算出しています。

企業従業員アンケートの結果、想定を大幅に上回る需要が見込めることになったため、導入する車両の長さは18mから30mに、編成の数を10編成から18編成に増強します。
従来は、駅東開業時は18mの車両10編成で約22.4億円を要するという想定でしたが、新たな需要予測に基づき約37億円増額。30mの車両を18編成導入して約59.4億円を要する見込みです。
利用者の増加と収益力の向上に役立つ快速列車を運行するための施設整備には約6億円を見込んでいます。

軌道(線路)の整備費は約99億円から約96億円に3億円減少、変電所や電気設備などは約50億円から約51億円と1億円増加の見込みです。
車両基地や停留場の整備費は約18億円から約26億円に約8億円増える見通しですが、これは従来の想定より大幅に高い需要予測に対応して車両の編成が長くなること、編成数が増えることを反映するためです。

一部から懸念が出ている渋滞対策として、交差点の改良と、交差点周辺などの軌道高架化の費用として、新たに約56億円を見込んでいます。

そのほか、車両基地や停留所など施工単価の見直しで約27億円の増加、東日本大震災を踏まえて鬼怒川渡河橋や導入ルートの道路の耐震性を向上するために約21億円の増加、車線構成の変更整備に約19億円の増加を盛り込んでいます。

LRT導入区間は、主に道路空間の中央部に軌道を敷設する予定で、導入区間の道路は車線数が変更となります。
JR宇都宮駅から国道4号線まで、現状は片側3車線のところ、片側2車線になります。
国道4号線から国道新4号バイパス付近まで、現状は片側2車線のところ、東方面は2車線のまま、西方面は1車線になります。
国道新4号バイパス付近から鬼怒川を渡り、宇都宮清陵高校や作新学院大学付近までは専用軌道を新設予定です。
宇都宮清陵高校や作新学院大学付近から清原中央通りまで、現状は片側2車線のところ、片側1車線になります。
清原中央通りから宇都宮テクノポリスセンター地区までは、片側2車線のまま変更はありません。

従来宇都宮市はLRTの採算ラインについては、自動車通勤からの転換率が3.6%という前提で事業費を算定していました。
今年実施したLRT沿線企業従業員アンケートの結果、23.3%の人が「利用する」と回答し、自動車通勤からの転換率は19.1%に及ぶことが判明しています。
このため、従来の想定に基づく車両や施設では輸送力が不足することから、必要十分な投資を行う必要が生じていました。
 事業費は従来の想定の約1.5倍となりますが、利用者が大幅に増加する見込みですので、その分収入も増加することが確実視されています。

 

下野新聞の報道によると、市は「当初計画より一定時間が経過し、事業の具体化を進める中で必要になった部分もある。丁寧な説明で市民の理解を得たい」と説明しています。