spacer_left

らしんばん Vol.31

PDFファイルでもご覧いただけます→PDFファイル

第20回 「定例会」開催報告

 2008年を迎えて間もない1月10日(木)、第20回となる雷都レールとちぎ定例会が開催されました。
 隔月で行なわれる定例会では、まちづくりに関する様々なテーマについて、学識者や行政の担当の方、あるいはメンバーの中でもその道の専門の方などを講師としてお招きし、勉強会を開催しています。



 今回は、宇都宮市役所の方を招き、「第5次宇都宮市総合計画」についてと、中心市街地での「商店街通行量・来街者実態調査」についての2つをテーマに講演がありました。

 まず、今後の宇都宮市のまちづくりの指針となる「第5次宇都宮総合計画」について、宇都宮市 総合政策部 政策審議室 室長の柴田賢司さんから、お話しをいただきました。



 宇都宮というまちは、自然災害が少なく、経済力も全国上位にあるという「強み」を持ちながら、中心市街地の活力低下や、環境負荷が高いまちの構造になってしまっていることなどの「弱み」も多く抱えていることが紹介されました。また、市民アンケートでは常に、渋滞(環境問題)、医療や福祉、子育て、公共交通が不便であること、などが指摘されているといいます。
 第5次総合計画においては、これらの「強み」と「弱み」、そしてアンケートによる「優先度」を考慮しながら「戦略性の高い計画」を策定していくそうです。大きく3つの項目、「幸せ力」「ブランド力」「底力」を掲げ、それぞれの方針が紹介されました。特に印象に残ったのは「ブランド力」の中の「都市の個性」というキーワードです。私たちが、住んでいて良かったと思えるまち、他の地域の人に胸を張って自慢できるまち、そして、多くの企業が拠点を構えるようなまちになって欲しいと思いました。
 最後に、将来的なまちのあり方として「ネットワーク型のコンパクトシティ」を目指すという説明がありました。これからの時代の環境への配慮、高齢社会が到来すること、そして橋や道路などの老朽化によってますますまちの維持費がかかっていくことなど、数年先を見据えながら、「効率的な」都市構造に転換することが急務であるとのお話しがありました。
 今回お話を伺って、行政側でも将来に負の遺産を残さないようなまちづくりを進めようとしているのだな、ということが良く解りましたが、私たちのような市民にとっては、直接的な利益として考えにくいため、なかなか理解してもらえない部分だと思います。こうした考え方や方針が、うまく広報できていないというのも、今後の課題ではないでしょうか。私たち市民も「自分たちのまち」のこととして意識を高め、行政側ももっと広く市民へのPRを行なっていくことも必要だと感じました。



 次に、宇都宮市 経済部 商工振興課の松本剛さんから、平成19年に行なわれた「商店街通行量・来街者実態調査」について説明をいただきました。この調査は、隔年で、毎回7月の後半(夏休みに入った土日)に行なわれており、中心市街地の「現状を把握する」ために行なっているそうです。
 調査によれば、昭和62年(1987年)に市街地を往来する人は17万人を超える程であったのに、平成17年(2005年)には半分以下の8万人となっているとのことで、中心市街地の活力低下という問題の数字的な裏付けとなっています。
 しかし、平成19年(2007年)に行なった調査では、20年振りにわずかに増加し、8万2千人となったそうです。これは、都心居住を進める施策をとったことや、オリオンスクエアなどのイベントスペースの整備などが功を奏したとのことです。
 そして注目すべきは「交通手段」です。50%の人は「公共交通」で来ているというのです。また、歩きや自転車で来た人が30%、クルマで来た人は20%に過ぎないという結果です。
 クルマで来る人が少ないから「駐車場を増やそう」という考えでは、到底、郊外型のショッピングモールには勝ち目がないのは明白です。これからの時代の環境や福祉の面でのサービスを考えると、1つの選択として「公共交通での来街者をもっと増やそう」「郊外からまちなかへの公共交通をもっともっと便利にしよう」という発想が必要なのではないでしょうか。
 来街者のアンケートによると、中心市街地に望むことは「商品の拡充と価格」ということだそうですので、これは個々の店舗だけではなく、商店街としての連携によって「モール的な一体感」などの演出をもっと検討すべきでしょう。そして、来ていただくための「交通手段」については、行政やバス事業者にも働きかけ、さらに便利な公共交通ネットワークや運賃プランを創ってはどうでしょうか。



 この講演の際に、会員の中からも質問がありましたが、「交通手段と滞在時間の相関」などを過去にさかのぼって分析すれば、もっといろいろな対応策が考えられると思います。折角の調査資料ですので、さらに活用しやすいものにして、「現状の把握」だけでなく、次の対策を打つための有効な資料として活用していきたいものです。

 「まちづくり」は、一方向からの視点ではなく、総合的な視野が求められます。
 将来に渡ってにぎわいのある「とちぎ」をつくっていくための第一歩は、私たち自身が「とちぎ」のいろいろな側面を知り、そしてどんなまちを目指すのか、ということに興味をもつところから始まるのではないでしょうか。
 今回の2つのテーマでのお話しは、私たちだけでなく、もっともっと多くの方にも聞いていただきたい内容でした。今後も定例会で、どんなお話が聞けるのかを楽しみにしています。



《事務局より》
 雷都レールとちぎでは、各方面で活躍されている方や専門家の方のお話しをお招きして、これからの「まちづくり」についての勉強会を行なっています。ご講演をいただける方や、私も講演を聞きたいという方は、ぜひ事務局までご連絡ください。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------

日本初、さきがけ号、運行開始!!
永嶋氏インタビュー

日本初の住民主導型地域内交通システムのさきがけ号が発進から一ヶ月たちました。今回はきよはら地域内公共交通運営協議会・永嶋公夫会長にインタビューです。「さきがけ号」の話もさることながら、それに期待されるまちづくりの効果などもお聞きしました。

雷都レールとちぎ(以下LRT):一ヶ月たっての利用者数は予測に対してどんなものですか?

永嶋氏:一日9便の運行で一便あたりの乗客数は3.2人以上と予想よりかなりいいですね。利用者対象としている高齢者がこの寒い時期に外出することに貢献しているとも言え、本格実施に向け順調だと思います。

LRT:マスコミの取材も増えてお忙しいことと思いますが。

永嶋氏:マスコミの力は予想以上に大きい。地域報道機関以外からも取材申し込みがありましたしこれらを有効活用したいですね。

LRT:財政面に関して、協賛金というのはどれくらい集まったのですか?

永嶋氏:具体的な金額は言えないが30社ほどの協力を得ている。その多くが運行地域内の企業ですが、こういうものは「薄く広く」がベターだと思うので、本格運行後はその輪を拡大できれば良いと思っています。ラッピングを含めた広告も考えているが専用車両ではないので現時点ではその取り扱いが難しいところ。

LRT:清振協会長としてのお立場でお答えいただきたいのですが、現在は一時間に一本という運行スケジュールです。スーパーにしても市民センターにしても用事はすぐに済んでしまいますので帰りのバスの待ち時間が長く感じられると思います。そこで商業施設を誘致するなどして主な拠点それぞれの回遊性を高める必要性があると思いますがその辺のお考えをお聞かせ下さい。

永嶋氏:現時点で具体的な行動は起していないがこの計画が軌道に乗ったら取り組む必要があると思う。利用者の主な行き先は病院、スーパーと市民センターです。いま具体的にイメージしているのはスーパーに隣接したかたちで病院専門のテナントビルを作ってそこに各科の個人病院を集積できないものかと考えています。総合病院を誘致するのは困難だがこういった形態をとれば総合病院に変わるものとして地域に貢献できる施設となりえると思いますね。現在の清原地区には「清原ってあの辺りですね!」とイメージできる中心街がないので、今後はそういったエリアの創造に向けた議論の構築を心がけていきたいと思います。

LRT:このバスを「動くミニサロン」、「動くエステ」という呼び方をされていますがその意味を教えて下さい。

永嶋氏:まずは「エステ」について言うと、私の年齢を例にしますが同じ73歳でも首都圏と地方の居住者では見た目で5歳は前者の方が若く見えますよね。それは主な外出手段が公共交通機関であるために自然におしゃれになるし気持ちもしゃんとしてくるからだと思います。私は地域の同世代の方々にできるだけ多く「さきがけ号」に乗ろう、おしゃれをしてどんどん外出しようと訴えています。次に「ミニサロン」については誰かとおしゃべりできる、コミュニケーションスペースという意味です。おしゃべりすること、おしゃれをすること、いずれも高齢が若さを保つ上でとても大切なことだと思っています。

LRT:最後に「さきがけ号」効果に期待する地域の未来像をお聞かせ下さい。

永嶋氏:まずはこの「さきがけ号」を成功させること。そうすることが各交通不便地域で公共交通への議論を高め、さらに基幹交通網整備への議論に繋がっていくと思います。清原には市の運動公園や飛山城などの施設も多くあるし是非とも基幹交通が欲しい。そして多くの人が訪れる地域として発展して欲しいというのが私の願いです。

永嶋さんとは今回のインタビューを通して初めてゆっくりお話しをさせて頂きましたが地域活性化に賭ける情熱はまさに「一生青春、一生感動」という言葉がぴったりの方でした。熱っぽいけど自論を押し付けるでもなく、やさしく包み込むような語り口に、大仕事を成し遂げる人の持つ共通の雰囲気を感じました。なお、運行開始までの苦労話は多々報道されていますので今回は省略させていただきましたのでご了承下さい。
    
プロフィール
永嶋公夫 ながしま きみお
茂木町出身。日本たばこ産業退職後、宇都宮市清原台6丁目に転入。
清原地域振興推進協議会 会長
きよはら地域内公共交通運営協議会 会長


以下は「さきがけ号」に関する詳細です。
*運行への道のり
平成18年 7月 住民へのアンケートを実施
     12月 実施地域を決定
平成19年 1月 清原地区の7つの自治会で運行計画を検討
     7月 住民代表による運営協議会が設立
     8月から9月 自治会単位の住民説明会を実施
     10月 運行事業者を決定
平成20年 1月 運行開始

*運行内容
きよはら地域内公共交通運営協議会
料金 1回150円
    1ヶ月定期券1,000円(税込み)
    8枚つづり回数券1,000円(税込み)
車両 ジャンボタクシー(乗車人員9名)

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「雷都ボイス〜メンバーの声〜」
公共交通機関の整備に望むこと
NPO法人チャレンジド・コミュニティ
理事長 金井光一

公共交通機関の整備としてLRTが議論させてきましたが、「既存地域を拠点として整備ながら、その拠点間を公共交通で結ぶというまちづくりの考え方としてネットワーク型コンパクトシティ」の構想や、これと呼応して地域内バスの試みとして「清原さきがけ号」の運行など、具体的な検討がスタートしてきています。いずれも、高齢社会への対応、弱者に優しいまちづくりを目的として議論されることを強く望むところです。

 チャレンジドとは「神から挑戦するように運命づけられた人」という意味で、障がいや難病などのハンディキャップのある人や彼らをサポートする人のことです。我々のNPO法人は、チャレンジドの自立(就労、社会参加)支援を目的に活動しています。チャレンジドの自立にとって、移動手段の確保は大変重要な課題です。

 障害者白書によるとチャレンジドの数は人口の5%超で、これに足腰の弱い高齢者を加えると、人口の約20%は健常者中心の社会で何だかのサポートが必要な人になります。
公共交通機関を議論する場合に多くの側面があると思いますが、高齢社会への対応やチャレンジドに優しいまちづくりという点から、我々は次の3点の徹底検討を望みます。
第一に、工学的・機能的側面の検討です。車いす利用者、足腰の弱った利用者、目の不な利用者、耳の不自由な利用者などにとって、ステップの構造、車内案内の方法(音声や文字情報)、スイッチの位置や形状、手すりの構造・位置などの検討です。
 第二に、町づくり(都市計画)のと連携で、自宅と職場間の移動、自宅と行政・医療・福祉機関間の移動、自宅とショッピングモール間の移動を考慮しなければなりません。
 第三に、地域社会のなかで安心して生活する上で、地域住民と企業、行政等との協働で実現する公共交通が必要になると思います。

 100年県庁だけでなく、100年交通網整備を実現させましょう。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------

このQ&A集を活用して更なる展開を目指そう!
代表 奥 備 一 彦



 昨年九月の定例会においてこれまでの活動の全てを総括するもとして、LRTに関するQ&A集を作成することが決定されて以来、小野隆士リーダーのもと希望者約10名による編集委員の努力が実を結び、本日ここに会員はもとより他の多くの人たちにも読んで頂ける小冊子として登場しました。
 当会の知的財産の完成を共に喜ぶとともに、今後はこれを有効に活用することが重要であると考えます。
 私は宇都宮が持続可能な都市を目指すために、LRTを基軸とした公共交通ネットワークづくりが不可欠であることを多くの市民に広く、そして正しく理解していただく必要があると思っています。「クルマは便利だ。LRTに乗り換える人なんていないよ」「赤字になること間違いなし。税金の無駄遣いだ」「夕張みたいに市の財政が破綻したら大変。子や孫に負 の遺産を残すことになる」「だからLRTはいらない」このもっともらしい論理はLRTに反対する一部の勢力によって流布され、高速道路の赤字や通行量の少ない道路建設等を批判する世論の中で、不幸にも県民のかなりの人たちに受け入れられてしまいました。
 一般的に赤字の事業が肯定される訳ではありませんが、採算性を示す数値があるわけでなく、公共財と私的財を区別する議論もない。夕張市の財政破綻を分析して、その原因を示してもいません。
 この事例のように重要な事柄に思えるが真偽のほどが疑わしい情報が多くの人の共有物となり、あたかもそれが真実で正しいことだと判断される現象を、社会的カスケード(カスケードとは「滝のほとばしり」)と言います。
 現在はインターネット等により大量の情報が自由に入手できるために、自分に都合の良い情報だけを集めて判断する傾向にあり、安易に社会的カスケード状態に陥りやすい、世論操作されやすい時代とも言えるでしょう。
 この様な危機を回避する方策として、偏りのない充分な情報に基づいて互いに民主的な討議を重ね選択する、というプロセス重視の熟議民主主義の概念が欧米を中心に注目されています。これはサダムフセインを倒せば民主主義と平和が守れるという不確かな情報を、充分な討議を経ることなくイラク戦争に参加することを肯定したアメリカ市民の反省から生まれたと言われています。
 LRTを基軸とした公共交通ネットワークの整備は、まさに熟議民主主義のもとで決定されるべきであると考えます。但し、議論のための議論であったり、小田原評定であってもいけないし、それらにより選択の時期を逸してしまうことがあってはなりません。
 この小冊子を活用して、正しく充分な情報の提供と討議を促す活動を展開しましょう!

※熟議民主主義に対比される概念は集計的民主主義。各 個人の選択の結集を集計し、その結果のみを重視する 民主主義。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------

編集後記
Q&A編集チームリーダー
      小 野 隆 士

 最初は、5回程度の打ち合わせで完成すると思って、軽い気持ちでスタートしたのですが、そうはいきませんでした。市民や会員の皆様から寄せられた多くの熱いメッセージやご意見は、そう簡単にまとめられるものではなかったからです。作成にあったて、以下の3項目を心がけました。
@ 読んで易しい   → 平易で簡潔な表現
A 見て楽しい    → たくさんの写真と絵
B 読み終わって理解 → 公共交通(LRT)とまちづくり、宇都宮の現状と課題につ 
いて、基本的なことが一通り理解できること

全部で16回の編集会議を経て、ようやく第一版を完成しました。はたしてめざした通りのものかどうかは、市民(読者)の皆様が判断するところです。これから私たちの活動は、いかに多くの市民の皆様にこの小冊子を読んでいただけるか、に移ります。作成にあたって、毎回貴重な時間を割いて参画された関係者の皆様に感謝いたします。

spacer_left

spacer_center

spacer_right

雷都レールとちぎ 2005 T-LRT.com